旧電氣世界社「電氣化學(1916-1921)」のデジタルデータ公開について

電気化学会
創立90周年事業委員会
編集委員会

 1916年から1921年にかけて出版されていた雑誌『電氣化學』が国立国会図書館デジタルコレクション( https://dl.ndl.go.jp/pid/1615801 )において一般公開されましたので、お知らせします。この『電氣化學』は東京高等工業学校(現東京工業大学)電気化学科の同窓会組織を母体に組織された「電気化学研究会」が編集、「電氣世界社」が出版した月刊誌です。19334月の本会創立後、同年7月に学協会誌「電氣化學」が創刊され、現在の「Electrochemistry」「電気化学」に繋がっていますが、この旧『電氣化學』の創刊は本会創立のさらに17年前に遡ります。

 現在の電気化学創刊号の記事「電氣化學協會設立經過󠄁概要󠄁( https://rekion.dl.ndl.go.jp/pid/2307637/1/41, 第1巻第1(19337月発行))」によれば、電気化学協会は「顧みるに先輩諸賢が電気化学に関する学術の進歩を図り之によってもっとも効果的に国家に貢献せん事を記して電気化学協会の設立を計画せるは遠く十数年前に遡る」とあり、前述の電気化学研究会の設立と符合します。さらに、「本協会設立の胚子は先ず東京工業大学、横濱高等工業学校の各電気化学科教官及び其の同窓先輩諸子によって地に下された。即ち昭和7325日東京工業大学電気化学科の同窓会なる電気化学会の評議員会に於て具体的に電気化学に関する学会又は協会の設立促進に関する決議があった。」とあることから、現在の電気化学会の設立において、旧・電気化学科同窓会での決議が重要なきっかけであったことが解ります。

 このように、電気化学研究会が編集母体となっていた『電氣化學』は現在の電気化学会の前史が記された雑誌であると言えます。これらの経緯から本会創立90周年事業委員会と編集委員会において公開に関する調整を行い、この度、所蔵されている国会図書館デジタルコレクションから公開される運びとなったものです。

 本書の公開にあたっては、特に著作権の承継手続が必要となりました。発行者である旧電氣世界社はその後「電気日報社」という新聞社となりましたが2009年に解散されています。また、編集者の母体である東京工業大学旧電気化学科同窓会「電化会」も2012年に解散されておりましたので、旧東京工業大学電気化学科の後継組織である物質理工学院のご協力を得て、本会が本書の著作権の取り扱いを継承することをお認めいただきました。この『電氣化學(1916-1921)』は創刊から108年が経過しておりますが、本会の前史が記された資料としてだけではなく、我が国の電気化学に関する貴重な資料でもありますので、本会会員に御案内する次第です。

 なお、本誌の公開にあたり、国立国会図書館関西館電子図書館課、東京工業大学物質理工学院、旧「電化会」関係者、横浜国立大学図書館、加藤科学振興会の関係各位の多大なご協力を得ました。ここに厚く感謝申し上げます。

図:『電氣化學』第1巻第1(19167月発刊)の扉「発刊の辞」。発行者「電気世界社」社主、三浦覚玄の著による。