会長挨拶「創設100周年に向かって―産官学のいずれにも魅力のある持続可能な学会を目指して―」
本会2024年度会長
東京理科大学副学長
創域理工学部教授
電気化学会は、昨年に創設90周年を迎えました。昨年の展望は「創設90周年を迎えて」とこれまでの振り返り、90周年事業、現状について触れてきました。2033年に迎える創設100周年に向かって、今後10年の間には、本会のカバーする多岐な領域における学問、技術の進歩、生成系AIなどの情報環境の飛躍的な進歩、社会状況、産業構造の変化も予想され、学界、産業界も多様な変化に対応して持続的に発展していく必要があります。本会も創設100周年に向けてスタートを切る年になりますが、産官学のいずれにも魅力のある持続可能な学会を目指していくことが重要と考えられます。それを実現するためには、電気化学会も改革を推進していく必要があります。その際には、公益社団法人に合わせた学会運営の在り方も求められます。このために、昨年度に引き続き会長を務めさせていただきます。
3年間続いた新型コロナウイルス感染症対策による様々な社会活動の制約も昨年の5月に5類移行となり、アフターコロナにおける様々な活動が行えるようになりました。大会、委員会、その後の懇親会なども対面で行えるようになり、コミュニケーションを取ることの大切さが改めて実感できています。一方で、ハイブリッド開催という便利なツールを手に入れて幅広い活動ができるようになりました。
このような中、学会の今後に向けた課題を抽出し、かつ短期的、中期的、長期的な課題に整理して検討を行うこととしました。昨年度は、本会にとって重要な大会の在り方、公益法人として持続可能な運営の在り方について取り上げ、「大会改革タスクフォース」、「収益事業創設タスクフォース」を立ち上げました。各々の構成メンバーは会長の元、副会長、業務執行理事、理事、関連する委員会関係者も含めた産官学の委員で構成し議論を重ねて理事会に答申しました。前者は、春の年会、秋季大会の在り方、大会開催形式、産官学にとって魅力のある大会にする方策などについて検討しました。これに伴い、大会学生会員の廃止、年会の講演時間の変更など短期的にできるものは今春の91回大会から実施し、討論などの時間を増やし差別化する方策は来年の秋季大会からの実施に向けて、産官学にとって魅力のある大会の方策は本部委員会で引き続き検討していきます。後者は財務の健全化、学会の安定運営に資する収益事業の創設の可能性について財務状況を含めて検討しました。2023年度決算においては、本部、支部、専門委員会の協力により、公益社団法人の運営要件である「収支相償」、「遊休財産の保有制限」については適合になりました。これは財務委員会などこれまでの活動も含めた賜物です。今後は、収益事業については継続的に検討しながら、内閣府で運営要件緩和が検討されており、その動向を見据えて短期的には公益事業で運営する方向で施策を引き続き検討していきます。
私も多くの学会に所属していますが、電気化学会は他の学会では味わえないフレンドリーで居心地の良いソサエティです。このような長い歴史、伝統のある本会の会長として貢献していければと思っています。本会の扱う分野は、今後世の中で重要とされているエネルギー、環境に深く関わっており、電気化学の進展、発展が大きく寄与するものと考えられます。実際に産官学に対してこの分野に係る種々の大型プロジェクトが動き、研究開発費、事業化支援として多くの国費も投入されています。これらを推進、達成するには産官学の連携が不可欠であり、その中心的な役割を果たせるのが本会です。産官学の連携強化も重要な課題であり、種々の施策を検討していきます。
産官学のいずれにととっても魅力のある学会、コミュニュケーションを大事にするフレンドリーな学会にしていきたいと思います。そのためにも持続可能な学会運営が必須です。100周年事業実施資金もスタートし、様々な施策に対して時間軸も意識してPDCAサイクルを回して改革していければと存じます。そのためには会員の皆様の忌憚のない意見をいただきながら、ご理解、ご協力の下、学会を今後も盛り立てていけるよう、よろしくお願いいたします。